クールな御曹司と初恋同士の想い想われ契約婚~愛したいのは君だけ~
匠が日常の中で自分のことを思い出してくれたのが照れくさく、ついそわそわする。

「私は今日が仕事納めなので大丈夫ですけど、匠先輩の方が忙しいんじゃないですか?」

「俺は昨日が仕事納めだったんだ。とはいっても出張先から今朝帰ってきて、そのまま家の大掃除。まあハウスクリーニングの業者にお任せだから、プロの技術に感心してるだけだったけど」

匠は軽く笑い声をあげた。

普段目にするスーツ姿と違い、今日の匠は黒いタートルネックのニットと細身のデニム。

清潔感がある短めの髪をラフに整えカジュアルな装いだ。

仕事から離れているせいか、表情も穏やかで口調もいつも以上に柔らかい。

キリリとした匠も素敵だが、ふたりきりの時にこうして気を許した顔を見せられるのはやはりうれしい。

自分が匠にとって特別な存在のような気がするのだ。

けれど、それはあり得ない。

美緒は心に浮かんだ思いに慌てて蓋をする。

自分は単なる後輩であり、長く付き合いが続いているのも面倒見がいい匠の優しさのおかげ。

この先ふたりの関係性に変化があるはずもなく、今日のように会う機会を作ってもらえるだけで満足しなければ。

美緒はこれまで何度も自分に言い聞かせてきた現実を改めて思い出し、調子に乗らないよう自制した。

「年末年始は副業の方も休めるのか? 正月は毎年お兄さんと過ごしていたよな」

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