クールな御曹司と初恋同士の想い想われ契約婚~愛したいのは君だけ~
「大丈夫です」

「いや、だけど連れ去りって……誘拐だよな」

「未遂です」

誤解させるような言い方をしたと気付き、美緒は慌てて胸の前で手を横に振る。

「兄がすぐに追いかけてきてくれて、犯人は警備員に引き渡されたそうなので」

悠真や両親の話では、犯人はそれまでにも何度か女児に声をかけては店から連れ出そうとしていたらしく、店に苦情がいくつも寄せられていたそうだ。

「兄はその時のことで自分を責めているんです。スーパーでばったり顔を合わせた同級生と話し込んでいる隙に私が連れ去られそうになったので、責任を感じているみたいで」

それまでも美緒を溺愛していた悠真だが、その事件以来さらに過保護になり、両親以上に美緒を気にかけ甘やかすようになった。

事件から二十年以上が経つが、今もそれは変わらない。

『俺に代わって美緒を守れる男と美緒が結婚するまで、俺は結婚しない』

口癖のようにそう言っている。

当時の記憶がない美緒にとって、匠の愛情はありがたい反面重荷でもある。

千咲の気持ちを最優先に考え、自分のことは気にせずに結婚してほしいと何度も伝えているのだが、聞き入れる様子はまるでない。

千咲との同居を始める時にも、悠真は美緒を自宅にひとり残すことにかなり悩んでいた。

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