EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
お昼のベルが鳴り、そこかしこから席を立つ音が響き渡る。
今日のお昼は何にする、なんて、ウキウキした声が聞こえてくる中、あたしは、一人、席を立たずにパソコンをにらみつけていた。
あたしが何をしていようと、他の人間は興味は無いのだ。
入社時から社食に行くコトは無く、一人、食費を切り詰めるために、ささやかにおにぎりと水筒を持って来て、デスクで、さっと食べるだけ。
最初は誘ってくれた同期も、一週間であきらめた。
――申し訳ないとは思うけれど。
「――それは、仕事か、私用か」
すると、真後ろで声がして、あたしは思わずビクリと肩を上げた。
その低い声に、おずおずと振り返る。
「……ぶ、部長」
思わず、持っていた水筒を握りしめる。
――マズい。
「――仕事なら、いったん休め。私用なら、事情を説明しろ」
あたしは、眉を寄せる。
最初から、そうだったけれど――何で、この人、こんな偉そうな物言いなんだ。
仁王立ちしている部長を見上げ、あたしは、そのまま視線を下げた。
「――申し訳ありません。私用です。週末までに部屋を探さないといけなくなったので」
「……週末って……もう、二、三日も無いぞ?」
素直に驚く部長に、思わず苦笑いが浮かぶ。
まあ、普通はそうよね。
あたしは、そのまま背を向けてパソコンをスリープにすると、席を立った。
「おい?」
「独身寮や、社宅に空きがあれば、と思っていたんですが、無理みたいなので、他を探します」
ロッカーに行ってスマホで探そう。
そう思い、部長に背を向ける。
「ちょっ……ちょっと待て」
「……はい?」
呼び止められるとは思っていなかったあたしは、間抜けな返事をしてしまった。
だが、部長は、そんな事は気にも留めず、続けた。
「――説明しろ。……橋の事もあるしな」
――何でよ。アンタに話す義理など無いわ。
あたしは、作り笑いを向ける。
「――プライベートです」
「部下が困ってるなら、手を貸すくらいはするが」
「必要ありません」
「――白山」
ついに呼び捨てにされたか。
イラついたような声音に、大きく息を吐いた。
上司ってだけで、何を偉そうに。
あたしは、部長を見ないまま、足を進めようとするが、すぐに腕をつかまれる。
「――離してください」
初めて会った橋の時のように強い力で引かれ、あたしは眉を寄せる。
それを、痛いのだと思ったのか、部長は、慌てて手を引いた。
「わ、悪い。――だが」
転勤してきたばかりで、みんなに良い顔がしたいのだろうか。
あたしの、ささくれだった心は、敏感に反応してしまう。
「放っておいてって言ってるのが、わかんないわけ⁉」
無意識に荒らげた声に気づき、急いで手で口をふさいだ。
――ここは会社。この前のように、お互いの素性がわからない、街中ではない。
だが、部長は眉を寄せたまま、あたしを見下ろしている。
「――申し訳ありません。……けど、あたしの事情です。部長にとやかく言われたくありませんので」
そう言い捨て、あたしは、総務部の部屋を小走りに出た。
今日のお昼は何にする、なんて、ウキウキした声が聞こえてくる中、あたしは、一人、席を立たずにパソコンをにらみつけていた。
あたしが何をしていようと、他の人間は興味は無いのだ。
入社時から社食に行くコトは無く、一人、食費を切り詰めるために、ささやかにおにぎりと水筒を持って来て、デスクで、さっと食べるだけ。
最初は誘ってくれた同期も、一週間であきらめた。
――申し訳ないとは思うけれど。
「――それは、仕事か、私用か」
すると、真後ろで声がして、あたしは思わずビクリと肩を上げた。
その低い声に、おずおずと振り返る。
「……ぶ、部長」
思わず、持っていた水筒を握りしめる。
――マズい。
「――仕事なら、いったん休め。私用なら、事情を説明しろ」
あたしは、眉を寄せる。
最初から、そうだったけれど――何で、この人、こんな偉そうな物言いなんだ。
仁王立ちしている部長を見上げ、あたしは、そのまま視線を下げた。
「――申し訳ありません。私用です。週末までに部屋を探さないといけなくなったので」
「……週末って……もう、二、三日も無いぞ?」
素直に驚く部長に、思わず苦笑いが浮かぶ。
まあ、普通はそうよね。
あたしは、そのまま背を向けてパソコンをスリープにすると、席を立った。
「おい?」
「独身寮や、社宅に空きがあれば、と思っていたんですが、無理みたいなので、他を探します」
ロッカーに行ってスマホで探そう。
そう思い、部長に背を向ける。
「ちょっ……ちょっと待て」
「……はい?」
呼び止められるとは思っていなかったあたしは、間抜けな返事をしてしまった。
だが、部長は、そんな事は気にも留めず、続けた。
「――説明しろ。……橋の事もあるしな」
――何でよ。アンタに話す義理など無いわ。
あたしは、作り笑いを向ける。
「――プライベートです」
「部下が困ってるなら、手を貸すくらいはするが」
「必要ありません」
「――白山」
ついに呼び捨てにされたか。
イラついたような声音に、大きく息を吐いた。
上司ってだけで、何を偉そうに。
あたしは、部長を見ないまま、足を進めようとするが、すぐに腕をつかまれる。
「――離してください」
初めて会った橋の時のように強い力で引かれ、あたしは眉を寄せる。
それを、痛いのだと思ったのか、部長は、慌てて手を引いた。
「わ、悪い。――だが」
転勤してきたばかりで、みんなに良い顔がしたいのだろうか。
あたしの、ささくれだった心は、敏感に反応してしまう。
「放っておいてって言ってるのが、わかんないわけ⁉」
無意識に荒らげた声に気づき、急いで手で口をふさいだ。
――ここは会社。この前のように、お互いの素性がわからない、街中ではない。
だが、部長は眉を寄せたまま、あたしを見下ろしている。
「――申し訳ありません。……けど、あたしの事情です。部長にとやかく言われたくありませんので」
そう言い捨て、あたしは、総務部の部屋を小走りに出た。