EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
「ただいま、美里」
「あ、おかえり」
夕飯の支度も終え、再びスマホとにらめっこしていると、ガチャリと鍵が開き、少々疲れを見せた舞子が部屋に入って来た。
「お疲れ?」
「疲れたわよ。――まあ、ネットの方でクレームが入っちゃってさ。店長と大わらわ」
「え、大丈夫なの?」
舞子の勤め先は、低身長の女性をメインターゲットにしたアパレルショップだ。
実店舗よりも、ネット通販がメインになっている。
「色が画像と違うって、キレちゃってさ。いや、注意書き読めよ、って思うんだけどさぁ」
「――あー……あるあるねぇ」
「微妙な差なんだけどね。まあ、言ってるコトは、わからんでもないんだけど、言い方ってモンがあるでしょうが」
ブツブツとグチりながら、舞子は洗面所に向かった。
あたしは、二人分の夕飯を盛ろうと、立ち上がる。
「で、結局、どうしたの?」
「遠方だったから、服は着払いで送り返してもらう。んで、お詫び返金。――着てもらえないよりはマシだって、店長は言ってたけど」
「――お疲れ。サービス業は大変だねぇ」
舞子は、部屋着に着替えると、そのふわふわの髪を後ろで縛りながら、ベッドに座ってあぐらをかく。
そして、立ち仕事の宿命――足のむくみをマッサージで和らげながら、
「ま、今日のは、まだマシよ。話が通じるから」
そんな、何気に怖いコトを言って、あたしを見やった。
「アタシのコトより、アンタよ、アンタ。部屋は見つかりそうなの?」
「――ん、まあ……」
その問いかけには、言葉を濁す。
すると、舞子は不機嫌を隠さず、煮物を温め直すあたしに言った。
「見つからないなら、アタシ、同棲開始延期するからね。アキにも言ってあるから、変な気ィ遣うんじゃないわよ」
「……だっ……大丈夫だって!」
あたしは、慌てて舞子を振り返る。
いつもいつも、迷惑をかけているのだ。
舞子は、その可愛らしい見た目に反して、なかなか昔堅気で、義理人情に厚い。
ずっと、こんなあたしを、心配してくれて――そして、あたしは、いつも迷惑をかけているのだ。
けれど、今回だけは、それはダメだ。
同棲、なんて、人生の一大事、邪魔するコトなんてできない。
しかも、あたしと違って、舞子は初カレ。
そして――たぶん、結婚も視野に入っているだろう。
親友の幸せを壊すようなコトは、絶対にできない。
「――舞子は、気にしないで、準備進めてよ」
あたしは、胸の奥の、ほんの少しの痛みを見ない振りをして、舞子に笑いかけた。
いよいよリミットも近づいている木曜日。
あたしは、社員向けの定期健診の予定表を組みながら、頭を悩ませている。
毎年のコトながら、面倒くさい。
数千人の社員、一人一人、対象か確認しながら、時間や会場を割り振り、関係機関にメールで日程を確認、調整。
その返事を待つ間、あたしは、関西支社から来ている独身寮の入寮申請の書類を確認しながら、ファイルを開いた。
――ああ、良いなぁ。
関西だったら、空き、結構あるわ。
思わず、思考がそれる。
本社分を見てみれば、やはり、空きは全く無い。
まあ、昨日今日で即退去は無いだろうし、それはそれで、あたしが困る。
――最悪、実家に帰る……?
そう考え、思い切り首を振った。
それだけは、無い。
――……あそこに、あたしの居場所なんて、無いんだから。
「あ、おかえり」
夕飯の支度も終え、再びスマホとにらめっこしていると、ガチャリと鍵が開き、少々疲れを見せた舞子が部屋に入って来た。
「お疲れ?」
「疲れたわよ。――まあ、ネットの方でクレームが入っちゃってさ。店長と大わらわ」
「え、大丈夫なの?」
舞子の勤め先は、低身長の女性をメインターゲットにしたアパレルショップだ。
実店舗よりも、ネット通販がメインになっている。
「色が画像と違うって、キレちゃってさ。いや、注意書き読めよ、って思うんだけどさぁ」
「――あー……あるあるねぇ」
「微妙な差なんだけどね。まあ、言ってるコトは、わからんでもないんだけど、言い方ってモンがあるでしょうが」
ブツブツとグチりながら、舞子は洗面所に向かった。
あたしは、二人分の夕飯を盛ろうと、立ち上がる。
「で、結局、どうしたの?」
「遠方だったから、服は着払いで送り返してもらう。んで、お詫び返金。――着てもらえないよりはマシだって、店長は言ってたけど」
「――お疲れ。サービス業は大変だねぇ」
舞子は、部屋着に着替えると、そのふわふわの髪を後ろで縛りながら、ベッドに座ってあぐらをかく。
そして、立ち仕事の宿命――足のむくみをマッサージで和らげながら、
「ま、今日のは、まだマシよ。話が通じるから」
そんな、何気に怖いコトを言って、あたしを見やった。
「アタシのコトより、アンタよ、アンタ。部屋は見つかりそうなの?」
「――ん、まあ……」
その問いかけには、言葉を濁す。
すると、舞子は不機嫌を隠さず、煮物を温め直すあたしに言った。
「見つからないなら、アタシ、同棲開始延期するからね。アキにも言ってあるから、変な気ィ遣うんじゃないわよ」
「……だっ……大丈夫だって!」
あたしは、慌てて舞子を振り返る。
いつもいつも、迷惑をかけているのだ。
舞子は、その可愛らしい見た目に反して、なかなか昔堅気で、義理人情に厚い。
ずっと、こんなあたしを、心配してくれて――そして、あたしは、いつも迷惑をかけているのだ。
けれど、今回だけは、それはダメだ。
同棲、なんて、人生の一大事、邪魔するコトなんてできない。
しかも、あたしと違って、舞子は初カレ。
そして――たぶん、結婚も視野に入っているだろう。
親友の幸せを壊すようなコトは、絶対にできない。
「――舞子は、気にしないで、準備進めてよ」
あたしは、胸の奥の、ほんの少しの痛みを見ない振りをして、舞子に笑いかけた。
いよいよリミットも近づいている木曜日。
あたしは、社員向けの定期健診の予定表を組みながら、頭を悩ませている。
毎年のコトながら、面倒くさい。
数千人の社員、一人一人、対象か確認しながら、時間や会場を割り振り、関係機関にメールで日程を確認、調整。
その返事を待つ間、あたしは、関西支社から来ている独身寮の入寮申請の書類を確認しながら、ファイルを開いた。
――ああ、良いなぁ。
関西だったら、空き、結構あるわ。
思わず、思考がそれる。
本社分を見てみれば、やはり、空きは全く無い。
まあ、昨日今日で即退去は無いだろうし、それはそれで、あたしが困る。
――最悪、実家に帰る……?
そう考え、思い切り首を振った。
それだけは、無い。
――……あそこに、あたしの居場所なんて、無いんだから。