あやかし猫社長は契約花嫁を逃さない
「颯司さん、今日の予定ですが。俺は猫宮家の蔵書を調べているつもりですが、颯司さんには以前断った榛原社長とのゴルフ、本当に来れないかと再度の誘いがありました。どうします?」
「ゴルフ場で猫になるのは……」
「大丈夫じゃないですか? 一晩同衾したんでしょう。持続効果高そうです」
二人の話を聞き流しながら味噌汁を飲んでいた龍子は、むせた。
(味噌汁が変なところに入った……!)
咳き込んでしまったら、隣に座った猫宮が軽く背中をさすってくれた。(え?)と龍子が顔を上げたときには、すでに犬島の方を見ていた。
「榛原社長の誘いは続けて何回か断っているからな。このへんで行っておいた方が良いとは思うんだが。猫にならないでいられるかな」
「心配なら古河さんにキスもしてもらえば良いんじゃないですか」
「柚希……」
背中をさすっていた手が離れていく。
たたみかけるように、犬島が言った。
「そもそも昨日はなんで一緒に寝ることになったんですか? 社長が夜に古河さんの部屋まで行ったわけですよね?」
「そういえば。結局昨日はなんの用事だったんですか、社長。話す前にコタツで寝てしまいましたけど」
龍子にも重ねて尋ねられて、猫宮はばつが悪そうに顔をそむけてしまう。その状態で、ぼそぼそと言った。
「猫になってしまって……。一晩猫で過ごすのも不安というか。人間に戻れるものなら戻りたかったので、古河さんにお願いしようかと」
「キスを?」
容赦なく犬島が問い詰め、猫宮は可憐に頬を染めつつも羞恥を振り切ったように顔を上げた。
「そうだが!?」
「つまり社長は、深夜に部下の部屋を訪れて、キスを迫ったということですか?」
「迫っ……迫る前に寝た!」
「それはそれで問題発言。『寝た』とは」
ごりごりと追い詰めていく犬島の良い笑顔を見ながら、龍子はしみじみと思った。
(犬島さん、絶対に楽しんでる……。猫宮社長で遊んでる。良いおもちゃだ)
よほど腹に据えかねていることでもあるのか。自分の恋愛がうまくいってない、などの。
詮索することなく龍子は黙々と食事を終えた。
かくしてその日、龍子はフリー、犬島は調べ物。
猫宮は得意先とのゴルフということで、三人別行動の予定と決まった。
「ゴルフ場で猫になるのは……」
「大丈夫じゃないですか? 一晩同衾したんでしょう。持続効果高そうです」
二人の話を聞き流しながら味噌汁を飲んでいた龍子は、むせた。
(味噌汁が変なところに入った……!)
咳き込んでしまったら、隣に座った猫宮が軽く背中をさすってくれた。(え?)と龍子が顔を上げたときには、すでに犬島の方を見ていた。
「榛原社長の誘いは続けて何回か断っているからな。このへんで行っておいた方が良いとは思うんだが。猫にならないでいられるかな」
「心配なら古河さんにキスもしてもらえば良いんじゃないですか」
「柚希……」
背中をさすっていた手が離れていく。
たたみかけるように、犬島が言った。
「そもそも昨日はなんで一緒に寝ることになったんですか? 社長が夜に古河さんの部屋まで行ったわけですよね?」
「そういえば。結局昨日はなんの用事だったんですか、社長。話す前にコタツで寝てしまいましたけど」
龍子にも重ねて尋ねられて、猫宮はばつが悪そうに顔をそむけてしまう。その状態で、ぼそぼそと言った。
「猫になってしまって……。一晩猫で過ごすのも不安というか。人間に戻れるものなら戻りたかったので、古河さんにお願いしようかと」
「キスを?」
容赦なく犬島が問い詰め、猫宮は可憐に頬を染めつつも羞恥を振り切ったように顔を上げた。
「そうだが!?」
「つまり社長は、深夜に部下の部屋を訪れて、キスを迫ったということですか?」
「迫っ……迫る前に寝た!」
「それはそれで問題発言。『寝た』とは」
ごりごりと追い詰めていく犬島の良い笑顔を見ながら、龍子はしみじみと思った。
(犬島さん、絶対に楽しんでる……。猫宮社長で遊んでる。良いおもちゃだ)
よほど腹に据えかねていることでもあるのか。自分の恋愛がうまくいってない、などの。
詮索することなく龍子は黙々と食事を終えた。
かくしてその日、龍子はフリー、犬島は調べ物。
猫宮は得意先とのゴルフということで、三人別行動の予定と決まった。