私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
「ふぁっ!?」
「これは……」
部屋に入ってすぐ、その光景に私たちは言葉を失った。
風情のある畳座敷の部屋。
奥の窓から見えるのは、日本庭園をモチーフにした露天風呂。
そして開け放たれた部屋の向こうには、並んで敷かれた二組の布団。
「え、えーっと……」
「まぁ、男女で同じ部屋、となれば、カップルと勘違いするのも仕方ないか」
「かっ──!?」
カップル!?
確かに宿泊者の名字は別々だから夫婦ではないし、それ以外で一緒の部屋なんて早々泊まるもんじゃないだろうけど……!!
「俺はこっちの寝室でパソコンしてくるから、ゆっくり入ってこい」
変わらない表情でそう言ってから、主任は荷物をもって寝室に入り、ふすまを閉めた。
私が気を使わないようにという配慮だろう。
こんな紳士で完璧人間の主任に気を遣わせてばかりではいけない……!!
さっさとお風呂に入って来よう。
私は荷物を持つと、一人露天風呂へ向かった。