私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
「ね、寝てます!! ぁ……」
私のばかぁぁあああ!!
何馬鹿正直に返事しちゃったの!?
寝たふりでもしちゃえばそのまま朝になるのを待つだけでよかったのに!!
墓穴掘った……!!
「ぷっ……お前、寝言にしても個性的すぎだろ。何だよ『寝てます!!』 ──って」
小さく噴き出した主任の声に、私はゆっくりと鼻まで布団を下げて顔をのぞかせる。
うあぁ……恥ずかしい……。
穴があったら入るからそのまま埋めてほしい……。
「今日はご苦労だったな。呑みすぎて気持ち悪くないか?」
少し距離のできた隣の布団にのそのそと潜り込んで、主任が私を見た。
いつもきっちりセットされた髪をはねさせ無防備に笑う主任はどこか幼く見えて、思わず胸が高鳴る。
思えば、あの日からいろんな主任の姿を見させてもらっている気がする。
それまではただの、ものすごく怖い鬼主任のはずだったのに。
優しい顔も。
少し策士な悪い顔も。
真剣に話を聞いて考えてくれる頼れる顔も。
こんな風に少しだけ幼い無防備な顔も。
私だけの特権、だったらいいのに。