【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 閃光のような速さで騎士団を後にし、ランドルフは屋敷へと戻った。
 予定にない主人の早い帰宅にマーティンは眉を上げて僅かに驚いた素振りを見せながらも、恭しく礼をしてその帰りを出迎えた。

「旦那様、いかがなさいましたか?予定では、本日は遅くなると……」
「マーティン、リーゼはどこにいる?」

 途端、マーティンの顔が曇る。

「リーゼ様は……先程出て行かれまして……」

 その言葉にランドルフは雷に打たれたような衝撃を受けた。
 
「で、出て行った……だと……」

 よもや遅かったというのか。ランドルフの視界が深い暗闇に覆われた。

 リーゼは身勝手なランドルフを見限ったのだろうか。
 もう彼女はここへは戻ってこないのかもしれない。そう考えた瞬間、足元が崩れ落ち、奈落の底へ落ちていくような感覚に陥った。
 
 跪いて許しを乞えば、彼女は戻ってきてくれるだろうか。
 東方には床に頭を擦り付けて詫びる「ドゲザ」という謝罪の仕方もあるらしい。彼女が首を縦に振ってくれるまで、地面に頭をめり込ませていたって構わない。
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