【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 その後、リーゼはランドルフから投宿するこの宿で一週間の療養を言い渡された。
 頭を強く打っただけで怪我はないのに大げさだ、と主張したのだがランドルフは聞く耳を持たなかった。頭を打ったのだから王都まで長距離で移動するのは危険だと。
 折れたのはリーゼの方だ。過保護な気はするが、心配されて悪い気はしないので。

 今日も部屋に引きこもり、読書に耽っていた夕暮れ時。
 昨日ときっちり同じ時間に部屋の扉がノックされた。その音を聞いたリーゼはすぐさま栞を挟み、読んでいた本を閉じた。
 ソファの脇にあるウォールナットの小机の上にそびえ立つ本の山のてっぺんに今しがた読んでいた本を置き、扉の前まで行き、待っているであろう彼を出迎えるべくドアノブに手をかける。

 扉を開けるやいなや、リーゼの視界は黒に包まれた。
 頬には風に当たって少し冷えたジャケットの感触。息を吸い込むと、土煙の匂いに混じって、大好きな彼の匂いが鼻腔をくすぐる。

「リーゼ、会いたかった……」

 耳朶をくすぐる甘い響きに、リーゼの顔は一瞬にして真っ赤に染め上がった。
 想いを通じ合わせてからというものの、ランドルフは始終こんな調子だ。リーゼへの好意を隠そうとせず言葉と態度で率直に示してくる。リーゼの心は早くも飽和状態になっていた。
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