【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 ヘインズ伯爵家はランドルフの母の生家だ。彼女の弟が家督を継ぎ、アナスタシアは現ヘインズ伯爵の次女に当たる。
 フォスター伯爵家とヘインズ伯爵家は親交が深く、現在十八歳のアナスタシアの夜会のパートナーは大抵従兄であるランドルフが務めていたらしい。
 が、だからといって他家にこんな朝早くから訪問する正当な理由にはならない。

「このような早朝にご訪問したこと、誠にお詫び申し上げます、フォスター夫人。お嬢様がどうしてもランドルフ様とお話になりたいと申しておりまして……」

 マーティンの隣で佇んでいた女性が深々と頭を下げた。彼女はアナスタシアの侍女とのこと。
 お嬢様の暴走を止められなかったことに責任を感じているようで、彼女の顔色はひどく青ざめている。
 
 気にしないで、と彼女を宥めつつ、リーゼは内心で苦笑いを浮かべた。
 彼女がなぜ来たかは、漏れ聞こえてくる会話とそれまでの経緯から大体予想がつく。
 
(お話って、要するにこの結婚に対して抗議しにきたのよね。そういえばアナスタシア様は昨日の結婚式にもいらっしゃってなかったわ。それだけ私が団長の結婚相手であることに不服ってことなんだろうけど)

 とは言っても貴族院の承認も得た正式な結婚なので、よほどの事案がない限り向こう五年は離縁が認められない。
 抗議にこられたところでどうにもならない。
 それにランドルフも、リーゼと離縁してアナスタシアと結ばれたいなどとは思っていないだろう。
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