【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 応接間では、身を乗り出して喚き立てるアナスタシアを前に、ランドルフはソファの肘置きに片肘をついて露骨に顔をしかめていた。
 リーゼが足を踏み入れると、二人は弾かれたように視線を扉口を向ける。

「リーゼ」
「だんちょ……いえ、ランドルフ様。私も、お客様にご挨拶をしてもよろしいでしょうか?」

 ニッコリと微笑んだ口元が緊張で引き攣っていないことを祈る。まだほんの二、三回しか呼んだことのないランドルフの名も上手く紡げているだろうか。
 リーゼは不安で浮き足立つ胸中を押し隠し、アナスタシアへ向けて優雅に膝を折った。久しく行っていなかったカーテシーも、昨日散々披露したこともあって動作も錆びついていない。密かに安堵しながら、リーゼはなるべく嫣然と見えるように微笑んだ。

「初めまして。この度、ランドルフ様の妻となりました、リーゼ・フォスターと申します。今後ともどうぞよろしくお願いいたします、アナスタシア様」

 アナスタシアは憤怒の形相でギリギリと歯を食いしばっている。怖い。

「なにがよろしくよ!!私、あなたがランドルフ兄様の妻だなんて認めなくてよ!もともとは私がランドルフ兄様と結婚するはずだったんだから!!」

 息巻くアナスタシアに圧倒され、リーゼは思わず一歩下がってしまう。
 そういえばランドルフの母上は、彼が婚約者を連れてこなければ相手を勝手に見繕うと言っていた。その相手というのがアナスタシアだったのかもしれない。
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