【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 リーゼとの結婚は名ばかりのものだ。今でこそ違えているが、当初は白い結婚を貫き通すつもりだったのだ。
 
 夫婦として振る舞うのは社交の場でのみ。家で顔を合わせる時間も必要最小限にして、必要以上に関わるつもりなど毛頭なかったというのに。

 リーゼの隣は、驚くほど穏やかで居心地が良かった。
 女と仕事以外の会話をして耳が痛くならずに済んだのは初めてで、まずそこに感動を覚えた。

 彼女は、ランドルフの周囲にいる女性の中である意味異質の存在だった。女性の中にも穏やかで理知的な女性がいるという彼女の言は間違いでなかったと、彼女自身が証明してくれた。
 
 彼女と過ごす時間はいつの間にか手放しがたいものになっていて。彼女となら共に人生を歩んでいけると、一時期は絶望すら抱いていた結婚生活にも明るい希望を見出せそうだった。

 だが、そんな安穏な未来をぶち壊したのはランドルフ自身だった。
 
 それは衝動と言ってよかった。
 清廉なリーゼを手折ってしまいたいという欲望に駆られた。彼女を名実共に自分のものにしなければ、気が済まなかったのだ。

 心の根底に蔓延っていたのは、事あるごとにランドルフを遠ざけようとするリーゼへの不満だ。
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