【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 頑なに、リーゼはランドルフに心を許さなかった。
 
 上司と共に暮らすのが気詰まりなのだろう。リーゼはランドルフが屋敷にいる間、食事の時間以外ほとんど自室から出てこない。
 
 こちらが指摘をしなければランドルフを名前で呼ぶこともなく、いつまでも他人行儀に「団長」と呼んでいたことだろう。職場でしか接点のなさそうな他の男のことは親しげに名前で呼んでいるというのに、だ。
 
 しかもアナスタシアから嫌がらせを受けていた時もそいつに頼ろうとしていたのだから、ランドルフの存在はその同僚以下に違いない。

 この結婚は契約結婚であると、明確に線引きをしてくるリーゼに次第に苛立ちを覚えるようになったのもその頃からだ。

 小柄で楚々としていたリーゼに男の庇護欲を掻き立てられ、他の男も目をつけているのは明白だった。
 もちろん真面目な彼女が不貞を犯すとは思っていない。
 
 だがどうしても、他の男に奪われないよう己の妻であるという証を彼女の体に刻みつけておきたかったのだ。
 その強い欲求は一度では収まらず、ランドルフはもうこの二週間で片手では数えきれぬほど彼女に欲望を注いでいた。
 
「彼女に触れたのは俺のエゴだ。それはわかっている」

 己の罪を吐露したランドルフへ、ジョシュアはなんともいえない微妙な表情を向けた。
 大袈裟なため息が静まり返った執務室に響く。
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