【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
「はあ……」

 昼下がり。青々とした緑の葉が茂る木々の下。
 中庭に設置された黒い鉄製の長椅子にちょこんと腰掛け、リーゼは大きなため息をついた。

 午前中は、ずっと欠伸を噛み殺していた。そのせいで奥歯が痛い。目もいつもより乾燥していて。渡り廊下を歩く遠くの人影も霞んで見える。

 リーゼの丸い榛色の瞳の下にはクマが色濃く貼り付いていた。典型的な寝不足の症状である。
 原因は、言わずもがなランドルフだ。

(……あの人、本っ当に何を考えてるの?!あ、あんなことまでするなんて……ッ!)

 昨夜の艶かしい記憶が蘇ってきて、リーゼは一人、火を噴きそうなほど顔を真っ赤にしながら、肩を震わせて悶絶した。

 全身――比喩ではなく言葉通り、頭のてっぺんから足のつま先までくまなく口付けられ、舐め回されたのだ。
 まるで口付けるというその行為しか出来なくなってしまったかのように、昨夜のランドルフはリーゼのありとあらゆる場所に唇を押し当てていた。
 
 しまいにはうつ伏せの状態で腰だけを高く上げられ、突き出す形になった臀部を『美味そうだ』なんて言いながら齧られて。
 あの時は冗談でもなんでもなく本当に、頭が沸き立って気絶しそうになった。もちろんそのまま意識を手放すことなど許してくれるはずもなく、リーゼは溺れるほどの愉悦を与えられたのだが。
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