【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 二人で観劇をしたその日に初めて彼に抱かれてから、もう三週間が経つ。
 ランドルフの夜の訪れは以降も定期的に発生し、リーゼは彼の真意を測りかねながらも、状況にただ流されていた。

 もちろん、ランドルフに抱かれることは嫌ではない。
 彼は毎回過剰なほどリーゼの体に快楽を注いでくれる。
 その手つきは優しく、たとえ愛されていなくても、大切にしてくれていることは十二分に伝わっていた。

 だからこれ以上望むことなんて何もない。望んじゃいけない。
 そう思うのに、彼に抱かれた後体の熱が冷めると、胸の辺りにポッカリと穴が空いたような空虚さに襲われていた。

 彼に触れられれば触れられるほど、熱を分け与えられれば分け与えられるほどに、リーゼの中の恋心が膨らんでいった。
 リーゼだけが抱く、全く釣り合いの取れていないこの感情の行き場はなく、いつも体内で暴れ回っている。それがひどく苦しい。
 これ以上この恋心の体積が増さないように、最近では極力彼と顔を合わせないようにしていた。

「はあ……」

 また一つ、リーゼの口から辛気臭いため息が漏れる。
 利害関係が一致しただけの契約結婚だというのに、リーゼはいつまでも割り切れていなかった。
 
 ランドルフから愛されたいと願うこの心が止められない。彼はリーゼのことを金で雇った妻としか認識していない。その願いが叶うことはないというのに。
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