お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「一先ず、当初の予定通り屋敷へ向かおう。状況を確認しないことには、作戦も立てられない」

 『情報収集が最優先だ』と語り、兄は一歩後ろへ下がった。
すると、茂みの中から水の矢が飛んでくる。それも、私達が元居た場所に。

 お兄様が移動してなかったら、直撃していたかも……本当に危なかった。

 『紙一重のタイミングだった』と考え、私は命を狙われる恐怖に晒される。
でも、兄が魔法で直ぐに犯人を凍らせてくれたため、ちょっと安心出来た。

「アクアドッグまで、居るのか。思ったより、厳しい状況かもしれないな」

「……ああ。先を急ごう」

 茂みに隠れていた青い犬はかなりの脅威なのか、リエート卿の顔色が曇る。
家族や領民の無事を願うように屋敷をじっと見つめ、彼は駆け出した。
私達もそれに続き、森の中を走り抜けていく。
途中、何度か魔物の襲撃に遭ったものの、リエート卿の剣術と兄の魔法のおかげで切り抜けられた。
私は体調不良のこともあり、依然としてお荷物状態だが……。
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