お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「まあ、当然本人が嫌がれば別の対応を考えていたけど。でも、幸い『是非入学したい』って言ってくれたし。とはいえ、まさか特待生で入れるとは思ってなかったけど」

 『一応、学費はこっちで負担する予定だった』と語り、小さく肩を竦めた。

 アントス学園の特待生は学費を免除されるだけでなく、逆にお小遣いまで貰えるシステムだ。
また、卒業したら前世で言う退職金みたいな項目で更に大金が舞い込む。
なので、平民はこぞって特待生枠を狙うのだが……成績優秀者やルーシーさんのような特殊能力者しかなれないため、なかなか難しい。

「で、リディアはそんな特待生とどんな話をしていたんだ?」

 話題がルーシーさん個人に移ってホッとしたのも束の間、リエート卿は本題を切り出す。
『具体的に教えてくれ』と述べる彼に、私はどう答えようか迷った。
周りに助けを求めようにも、兄はもちろんレーヴェン殿下も興味津々なので頼れない。

「ルーシーさんのプライバシーに関わりますので、会話の内容まではちょっと……」

「あー……それは確かにそうだよな。でも、内容によっては神殿に報告しなきゃいけないから、何の話題だったかだけでも教えてくれないか?」

 珍しく食い下がってくるリエート卿に、私は返答を躊躇う。
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