お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「それでも、私はリディアのことを受け入れてきちんと親として振る舞うべきだった。今では、とても反省している。本当にすまなかった」

 私の前まで来て頭を下げ、公爵は心より詫びる姿勢を見せた。
すると、公爵夫人もそれに倣うように居住まいを正してお辞儀する。

「心から、謝罪するわ。ごめんなさい」

「無論、『許してほしい』とは言わない……いや、言えない。『家を出る』と言うほど、追い詰めてしまったからな」

 『本当に申し訳ない限りだ』と肩を落とし、公爵はじっと目を瞑る。
不甲斐ない自分を責めるように。
『まだこんなに小さい子になんて仕打ちを……』と猛省する彼の前で、公爵夫人は顔を上げた。
かと思えば、ギュッと私の手を握る。

「でも、もし可能なら────親子として、やり直すチャンスをくれないかしら?」

「!」

 大きく目を見開いて固まる私は、公爵夫妻を凝視した。
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