お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

中央神殿

 ────洗礼式。
神より賜りし力を確認する儀式のことで、魔力検査も兼ねている。
だが、一番の目玉は(みな)生まれつき持っているというギフト。
我々の誕生を祝う神様からのプレゼントで、種類は様々。
ある者は瞬間記憶能力だったり、またある者は瞬足だったりと主に才能関連のギフトが多い。
稀に物質を伴うギフトもあるらしいが、目に見えないものの方が圧倒的に多かった。
また、ギフトの数は大抵一人につき一つだけ。
でも、数年に一人くらいの割合で複数のギフトを持つ者が居た。

 『確か、お父様は複数持ちだった筈』と思い返す中、ハンナに手を引かれて隣の部屋へ入る。
そこで真っ白な衣装に着替え、私は銀の杖をそっと握った。
これらは、母より誕生日プレゼントで貰ったものである。
なんでも、洗礼式に必要なものらしい。

 通常は神殿側で用意するものらしいけど、希望すれば自分達で調達してもいいとのこと。
もちろん、派手なものやアクセサリーは禁止らしいけど。

 裾や袖に銀の刺繍が施されている程度のシンプルな服と先端が少し丸まっている杖、それから髪飾りの代わりとして結ばれた銀のリボン。
禁止事項を破らないよう、必死に頑張った母の努力が垣間見えるようだ。
────などと考えている間に馬車へ押し込まれ、私は家族と共に神殿へ向かう。
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