この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜

3話 タマの強い味方

 壁掛け時計は午後四時を指そうとしていた。
 根を詰めすぎるきらいのあるミケに休憩を取らせるため、一般的な午後のお茶の時間である三時に彼を訪ねるのが私の日課だ。
 それがこの日、ミケに指摘された通り遅くなってしまったのには、王妃様のハーブキャンディ作りを見学した以外にも理由があった。

「途中で国王様にお会いしましたけど、すこぶるお元気そうでしたよ。お医者様の手を借りて、庭をよちよち歩いていらっしゃいました」
「よちよち……まあ、歩けるまで回復なさったのならよかった。タマがここに来るのが遅くなったのは、父上の話し相手をさせられたからか?」
「おネコちゃんを抱っこしたいんじゃー! って駄々を捏ねられまして。お医者様と一緒に宥めるのが大変でしたよ」
「それはご苦労。ネコくらい軽いものだろうが、せっかく快方に向かっているところに、わずかでも腰に負担をかけるのはよくないからな」

 本来ならば、戦後処理の先頭に立つのはベルンハルト国王のはずだった。
 ところが、半年前の最終決戦直前に負傷──と、表向きはなっているが、実際のところはギックリ腰をやって療養中のため、一人息子であるミケが全てを肩代わりしているのだ。

「そんな国王様からミケに伝言です。〝今夜一緒に飲みたいから、一番いいワインを侍従長から掻っ払ってこい〟だそうです」
「相変わらず、人使いの荒いお人だ」
「私も王妃様と女子会する約束なので、ついでにもう一本、なんかいい感じのやつ掻っ払ってきてください」
「お前も大概だな。なんかいい感じのやつって何だ」

 そんなやりとりをしつつ、私はお茶を淹れるためにミケの膝から降りた。
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