この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜

5話 公爵令嬢と有象無象

 バラのトンネルを抜けてすぐの場所には、大きな噴水がある。
 その側に立つ石造りの東屋にて、三人の年若い令嬢がお茶会の真っ最中だった。
 さっきからきゃらきゃらと楽しそうに聞こえていたのは、彼女達の声だったらしい。
 私に向かって飛んできた高慢そうなのも、そのうちの一人の声だった。

「ああ、いやだ。戦場で拾ってきた女なんて得体が知れないわ」
「素性のはっきりしない人間を城内でのさばらせて、軍部はどういうおつもりなのかしら」
「殿下も、どうしてこんな者に心を砕くのでしょう。まさか、何か呪いにでもかかって……?」

 令嬢達は私を呼び止めておきながら、こそこそと言い交わす。
 バラのトンネルと東屋は十歩も離れていないため私にも聞こえているし、むしろ聞こえるように言っているのだろう。
 つまり、とてつもなく感じが悪い。
 私がムッとする一方、腕の中のネコは舌舐めずりをした。

『ぐへへへ……あやつら綺麗に着飾っとるが、心は真っ黒で汚いのぉ。嫉妬と羨望でドロドロじゃわい。珠子が王子達に目をかけられとるんが気に入らんようじゃな』

 ネコはそう言うと、私の腕から飛び下りる。
 そして、もう一歩も歩かないと宣言していたにもかかわらず、令嬢達がたむろする東屋に向かって駆け出した。
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