まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
 兄二人の会話を、フォークでケーキを切り分けながら聞いていた。

(早く王宮の外に出られるようになればいいのに)

 牛乳を差し出され、それをこくりと飲む。
 うん、チョコレートケーキは、牛乳にも合う。
 テティウスの皿がほぼ空になった頃――不意に軽やかな音楽が聞こえてきた。テティウスは、この曲を知っている。
 これは、春の訪れを祝う曲だ。ちょうど、今の時期のような。

「うわあ!」

 声をあげたのは、アクィラが先だったか、テティウスが先だったか。
 そんなこと、どうでもよかった。気にならなかった。
 目の前をひらひらと飛んできたのは蝶。ただし、普通の蝶ではない。その蝶は、驚くべきことに水でできていた。
 水滴の一粒もこぼすことなくひらひらと、王族一家の周囲を飛び回る。
 一匹、また、一匹と。あらたに蝶が加わる。
 そして、その蝶はふわふわと漂っていくと、互いに身体をぶつけ合った。

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