身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 信じられない言葉に唖然とする結乃に祖母は続けた。

「実はね、前から清さんの伝手で不動産さんに頼んでいたんだよ」

 すでに家を鑑定してもらっていて、家屋の価値はほぼ無いが、土地がまとまった金額になることが分かっているという。
 
 今回の怪我をきっかけに、祖母は家と土地を売り、そのお金で高齢者用のアパートに移り住もうと考えたらしい。

「これ以上、結乃にも周りの人にも迷惑は掛けられないからねぇ」

「迷惑なんて思った事ない! おばあちゃんはあの家が無くなってもいいの? みんなで暮らした思い出がある家なのに」

 ベッドにゆったりと腰掛ける祖母の手を結乃は思わず掴む。

「思い出はもちろん大切だけど、いつまでも縋るのはやめようと思ったの」

「おばあちゃん……」

「結乃はきっとおばあちゃんの為にあの家を残そうとしてくれてたんでしょ? きっと色々無理をさせてたね」

「違う……おばあちゃん、違うの」
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