身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 数日前、家まで送ってくれた時の話は耀の口から一切出ていない。

 単に興味が無いのかもしれないが、もしかしたら敢えて触れないようにしてくれているのではないか。
 
 今日を最後に会うことがない人だから、このままにしておけばいい。
 
――でも、それでいいのだろうか。

「そろそろ行こうか。帰りは車で送る」

「あの……っ」

 ベンチから腰を浮かす耀を制止するように結乃は声を掛ける。

「宇賀地さん……ごめんなさい。私、本当は」

 こちらを見た耀に向けて言葉を続けようとした時、ベンチの上に置いておいたバックの中で結乃のスマートフォンが震えて着信を告げる。

「ごめんなさいっ、マナーにし忘れてました」

 なんでこのタイミングでと慌ててスマートフォンを取り出した結乃に耀は「出てくれていい」と促す。

 すみませんと謝ってから画面を見ると〝清さん〟と表示されている。

 彼は祖母の連絡を受けて今日家の雨戸を直しに来てくれているはずだった。その連絡だろうか。
 
 立ち上がって少しだけ耀と距離を取り、通話ボタンをタップする。

「もしもし、清さん?」
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