身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 今日家に来てくれてるんだよね、と続けようとした結乃の耳に『結乃ちゃん今どこ!?』と清の切羽詰まった声が響いた。

『落ち着いて聞いて――澄子さんが倒れた』

「……おばあちゃんが?」

 一瞬で背筋に悪寒が駆け抜け、心臓がバクバクと鳴りだす。

『とにかく苦しんでいて動けないんだ。これから救急車で病院に向かうから』

 清は今救急車が到着したところで祖母と一緒に病院に向かうという。
 病院の場所を確認し「すぐに行くから」と伝え、震える手で電話を切る。

「おい、大丈夫か? 顔が真っ青だ」

 ただならない結乃の様子に耀が近寄り顔を覗き込んでくる。

「おばあちゃんが……家で倒れて……今、救急車で……病院に行かなきゃ……」
 
 結乃が自らに言い聞かせるように呟くと、耀の顔に緊張がはしる。

「――病院の場所は?」

 問われるまま、清に聞いた病院名を告げる。
 一刻も早く病院に行かなくては。分かっているのになぜか足が地面に張り付いたように動いてくれない。

「そこなら車の方が早い。連れて行く」

 彼はベンチの上の結乃のトートバックをさっと肩に掛けると、震える結乃の手を握った。

「大丈夫だ。まずは落ち着いて」
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