悪女の涙は透明らしい
柔らかい湯気と香りに包まれて、少しずつ荒ぶった波が凪いでいくのを感じる。

窓の方に視線を移すと、真っ暗闇に雨の滴り落ちる音が微かに聞こえる。
閉店間際で天気も悪い影響か、店内には他に客の姿はなかった。


時計を見ると時刻は21時前。

私、こんな時間までいつの間にか寝ちゃってたんだ……


康二さんがいれてくれたホットココアは甘くてほろ苦くて…とても優しい味がする。



「ここに来ると安心する」


思わずこぼれた言葉にふたりが目を丸くした後、康二さんが嬉しそうに微笑んだ。



「嬉しいな。奈緒ちゃんならいつでも大歓迎だよ」


「でも次から鍵はかけろよ。ほら、これ合鍵」


「え、わっ.......!」

チカが投げた鍵を慌てて両手でキャッチすると、掌にすっぽりと収まるレトロな金色の鍵が目に映る。


.......え、なんで持ってんの?

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