恋も仕事も奪われた私ですが、お忍び社長に愛されているようです
「みなさんの前で発表する自信がないなら、私協力しましょうか?ここの企画営業チームで出すっていうのもいいですよね」

 パソコンの向こうから笑顔をニコニコと向けているのは小久保さん。

「まだ出すとは決めてないんだ」
 私は曖昧な笑みを浮かべて、視線を落とした。
 美山さんを頼ろうと思っていたのは情けなかったな。まずは一人で企画書を作ってみよう。自分自身に喝を入れて、パソコンに向かい合う。

「そうだ、吉平さん。別件で相談があるんですよぉ」

 小久保さんはそう言うと私の席までやってきた。……嫌な予感しかしない。私は一呼吸飲み込んでから彼女に笑顔を向けた。

「E社のウエディングイベントですけど私に任せてもらえません?」
「え?」
「実は学生の頃、結婚式場で模擬挙式のモデル役をしてたこともあったんですよ。だから吉平さんより詳しくてずっとうまくやれると思うんです」

 まるでおもちゃを欲しがる子供のような物言いに身体が固まる。E社とは新卒の時から関わらせてもらってもう今回は四年目のイベントだ。私の方がE社にしても、ウエディングイベントにも詳しい自信がある。
 確かに私は小久保さんほど、円滑なコミュニケーションを取れるわけではない。だけど蓄積された信頼関係があるのだ。それらを無視して踏みにじるような発言に怒りの火種が燻る。
 ……ううん、腹を立てても仕方ない。冷静にならなくちゃ。
 でもどうしてだろう。「E社のイベントは大きくて新人の私にはできそうにありません」と言っていたはずなのに。どうして突然。
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