恋も仕事も奪われた私ですが、お忍び社長に愛されているようです
 お昼休みはいつも自分の席でお弁当を食べる。その隣で美山さんがコンビニのおにぎりやサンドイッチを食べる。それが私たちの日常だった。今日は他の部署からも噂を聞きつけた女性社員たちが現れ美山さんを取り囲んで、お昼を一緒に食べないかと熱心に誘っているらしい。
 美山さんはいつも通りの仏頂面でパソコンを見つめていて誰にも目を向けない。きっと朝もこうだったのだろう。見た目が変わったからといって中身は変わっていないことに密かに安堵する。
 お弁当の入った保冷バッグを取り出したところで、私たちの前の席の小久保さんが立ち上がった。

「それじゃあ美山さん、ランチに行きましょうか」
 まるで元々約束していたか、毎日一緒にランチいく仲のごとく声をかけたのだ。周りに集まっていた女性社員もそう感じたのだろう。
 
「じゃあ次の機会に」
「来週はいつでも空いてますから」
「あとでメール送ってもいいですか」などこの場の誘いは諦めたように見える。
 小久保さんは場の空気を作るのがうまい。きっとこの後は「美山さんを助けようと思ったんですよ」とか言うんだろうな。
 二人がランチに向かう姿を見たくないなと思っていると隣の美山さんが立ち上がった。

「それじゃ行きましょうか」
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