好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜
『……知佳が、……企画なんて考えるわけないじゃん! ははっ、ありえないってー』
スクリーンには映し出されず、スピーカーから音声だけが聞こえてきた。
最初はノイズまじりだったが、次第にノイズは消え、聞きなれた声が鮮明に聞こえてくる。
『企画書考えたのは、指導係の冴えない先輩だよー。それを拝借しただけ』
『簡単だったよ。おじさんたちなんて、知佳の涙見たら一発。すぐに信用してんの。うける』
会議室の空気が一気にざわつく。
佐伯さんは、ぐっと顔を歪め血相を変えた。
「ちょっと、止めて! なんなのこれ!」
佐伯さんの叫びに近い声があがるが、スピーカーから流れる音声は止まらない。
『でも、企画通ったのは想定外。ただ、莉乃先輩に泥をかぶってほしかっただけなのに。大誤算!知佳はただ、莉乃先輩の立場をなくしたかっただけなのにさー。まさか採用されるとはね』
『面倒だよー。別に仕事にやりがいとか求めてないし。この会社に入ったのだって、年収がそこそこ高い男捕まえるためだけだし』
「ちょっと! やめてってば! 誰だよ! ふざけんな!」
佐伯さんは、相当焦ったのか口調が荒れる。
塩らしい態度を貫いていた佐伯さんの取り乱す姿に、その場にいた全員が顔を見合わせた。
「この声、佐伯さんだよね……」
「えっ、どういうこと?」
「佐伯さんって、こんな子だったんだ」
戸惑いの声があちこちからあがる。
知佳とは佐伯さんの名前だ。
自分を知佳と呼び、特徴のある甲高い声。
この音声の声の主が佐伯さんであることは、誰が聞いても明白だった。