好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜
佐伯さんがいなくなり、ハッと我にかえる。
聞きたいことは山ほどあった。
「千歳さんっ!盗聴器ってどういうことですか?」
「あー、香坂に言ったら、絶対止めただろ?」
「あ、当たり前です! 盗聴器なんてだめですよ!」
「ほらな。だから秘密にしてた」
秘密って。まさか。
私のために盗聴器を佐伯さんに――?
「俺は香坂が、人のアイディアを盗用なんてしないって信じてた。でも、あの場で俺が味方したところで、信用してもらえるか……確信が持てなかった」
私をチラリと見て、言葉を続ける。
「佐伯のやつ、演技だけは上手で、他の社員の気をうまく引いてただろ? 同情を持ってかれてる中、覆すには証拠が必要だと思ったんだ」
「それで、盗聴器を……?」
「上手くいくかは半々だったけどなー。あいつがお喋りだったおかげで助かった」
「でも、盗聴器なんて……」
「最初に罠に嵌めたのは佐伯だ。やってもいないことを、被せられたんだぞ? 黙ってられるか」
千歳さんは、私より佐伯さんの言うことを信じたのだと思っていた。
だけど、最初から私のことを信じてくれていたんだ。
その事実に、胸がじんわりとあたたかくなる。
「言っただろ? 力になるって」
その言葉の意味は、すぐに思い当たった。
『一人で抱え込まなくていいから。力になるよ』
はじめて二人で出掛けた日、私の踏み出す一歩となった会話が脳裏によみがえる。
思い至った途端、息が詰まりそうになった。
千歳さんの行動が、全て私のためだったなんて。
嬉しくて、我慢していた感情があふれ出す。
「俺のやったことは確かに正当法じゃないかもしれない。けど、後悔なんてしない。香坂を守る方が大事だから」
彼の言葉に感情が揺れる。
申し訳なくて、嬉しくて、愛おしくて。
感情の波が涙となり、一気に目が潤む。