好きが故に欺いて〜罠に嵌められた私を待ち受ける甘い愛〜
 
 頬に涙が伝っていく。胸が痛まないのは、これが嬉し涙だからだ。

「わ、私……っ、千歳さんにっ、信じてもらえなくてっ、嫌われたと……思ってた」
「嫌いになるわけない。むしろ……」

 言葉を止めると、大きな手で私の頬を伝う涙を拭う。

「あの日、伝えたかったこと。今も変わってない」
「あの日……?」
「あの夜、酔いに任せてキスしたわけじゃない。香坂のお人好しなところも、我慢してしまうところも、可愛いところも全部好きだ。俺と正式に付き合ってほしい」

 真っ直ぐな言葉は、私が待ち望んでいたものだった。


 感極まりうまく声が出ない。言葉の代わりにこくんと頷くと、肩を引き寄せられる。

「……やっと言えた」

「か、会社ですよ? 誰か見られたら……」

 理性が働き、胸板に手を当て押し返した。

「知ってるけど?」

 妖艶に微笑むと、躊躇なく唇を奪われる。
 熱に侵され言葉が消えた。


 自分でもはっきりと、千歳さんを求めているのを感じた。
 私はずっと彼が欲しかった。


 互いの吐息に脳が甘く痺れる。
 彼の優しいキスに幸福を感じている私がいた。
 
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