しょっぱい後には甘いもの。
あっけなく終わった私とにゃんにゃんの関係。
アドレスしか知らない仲。
電話なんてしたことない。
誕生日もにゃんにゃんの進路も知らなかった。
ただただ、にゃんにゃん♪の合言葉だけで繋がっていたあの頃。
マンモス校だった私の高校は、校舎も違うせいか結局彼の姿を一度も見ることがないまま。
それが15年の歳月を経て今ここににゃんにゃんがいるではないか。
「何で泣いてんのよ?どうしたんだよ。」
「…ヒクッ…ヒクッ…。」
「一人か?時間あるか?あるよな?」
「…時間しかありません。」
「腹は?減ってるか?何か食うか?飲むか?」
「…何も…いりません…。」
「分かった、ホテルだな?」
馬鹿か!?
馬鹿なのか!?
空腹じゃないならホテルってどんな知識を身に付けたらそんな公式が出来上がるのか。
それともヘディングし過ぎて馬鹿になったのか!?
「…にゃんにゃんとにゃんにゃんはしないよ。」
「いや別に…にゃんにゃんをしたいとかじゃなくて…ってややこしいわそれ。」
突っ込みを入れるにゃんにゃんの姿は明らかに仕事中であろう、シンプルなネクタイを締めて白シャツにグレーのパンツ。
ツーブロックにベリーショートな黒髪のヘアスタイル。
高校の時からと比べてほんの少し増えた目尻のシワ。
だけど変わってないのは女癖が悪いというより、何もしなくてもモテる顔立ち。奥二重なのに大きな瞳。何より顔のバランスが良い輪郭。
孝則は…
別にイケメンじゃなかった。
背も低いし身体も細くて、髪の毛が薄くなったのが最近の悩みだったのを思い出す。
「う、う、うわぁぁぁん!!」
「おいおいおいおい!此処で泣かれたら俺が泣かしたみたいになるから!!落ち着け!とりあえず来い!乗れ!」
たまたま停まっていたタクシーに無理やり乗せられて、後部座席でヒクヒクと泣きすぎてしゃっくりをしながらにゃんにゃんに泣いてる経緯を話す。
「…と、いうわけで。」
「まぁ、お疲れさんて感じ。」
「優"し"く"な"い"ぃ"ぃ"」
「いやだって…。まぁいいや、とりあえず美穂の荷物、マン喫から全部持って来い。」
「お"金"か"し"て"ぇ"ぇ"」
「やるやる。ホラっさっさと持って来い。」
恥ずかしながら財布にお金が入っておらず、お金を下ろす前ににゃんにゃんと出会ってしまい、彼から万札を受け取って支払いを済ませた。
お店からキャリーケースをゴロゴロ引きずってタクシーに戻る。