しょっぱい後には甘いもの。
「お釣り。」
「要らね、しまえ。」
「ラッキー。」
「本音駄々漏れか。」
15年の歳月が経っているにも関わらず、特にあの頃みたいに意識することもない私達。
「運転手さん、◯◯区◯丁目の◯マンションまで。」
にゃんにゃんが何処かの住所を伝え、少し気持ちが落ち着いた私は車内の窓から沢山のビルと歩く人をボーッと眺める。
いや、落ち着いたというより心が空っぽというか。
思い出すのは孝則と…
のり塩のポテトチップス
マジでトラウマ。
のり塩見ただけで涙出る自信ある。
なんなら青のりのあの独特な臭いですらトラウマになるかもしれない。
「なんか腹減ったな。たこ焼とお好み焼きどっち好き?それかちくわの磯辺揚げ食いたくね?」
「わざとか!」
「何がだよ。」
ご飯を食べに行くかもしれない雰囲気に、ちくわの磯辺揚げを選択肢に入れるとか聞いたことないわ。
むしろ一年間の内に食べるとしても片手で収まるのではないか。
「あ、着いちゃったわ。」
「何処?ここ…。」
「何処って俺のマンション。」
タワ…マン…
タワーマンションが私の目の前にそびえ立つ。
「あ!二階ってゆうオチ?」
「惜しいな、その二十倍だわ。」
「よっ!?よんじゅ…」
どこでどうなったら四十階に住める種族が出来るのか。
属性はなんなんた。必殺技は【にゃんにゃん】か!
よくよく見たらにゃんにゃんの腕時計、PがついたPのやつ。
腕時計なんて詳しくないけどたまたまテレビで見て孝則とぶったまげして覚えていたハイブランド。
「そ、その腕時計…。」
「これ?30歳の自分の誕生日に思いきって買った。」
思いきる値段が桁違い!!
8桁目前の7桁の値段を自分の誕生日に買うとか正気の沙汰じゃない。
卵一パック398円たっかぁ!って騒いだ私の金銭感覚は絶対間違えていない。
「にゃんにゃんて…何者なの?」
タワマンのエントランスで思わず足が止まって聞いてみる。…が。
「ちくわの磯辺揚げが好きなにゃんにゃんだよ。」
と、思いっきりはぐらかされた返答に、昔の面影を匂わせてイケメンがニヤリと笑う。
私も実はちくわの磯辺揚げ大好きでしたけど!!
チーズ入りとか最高ですけど!!
でも青のりは今は見たくないんですよ。