不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?
 ブライト殿下は、少し口の端を釣り上げて言葉を発していた。
 その馬鹿にしたような口調には、ナルネア嬢も表情を歪めている。流石にその侮辱は、許容することができなかったのだろう。
 ただ彼女は、すぐに表情を元に戻した。それでも王子には逆らえない。そう思ったのだろう。

「……行きますよ! 皆さんっ」
「え? あ、ナルネア様?」
「お、お待ちください、ネルネア様」

 結局ナルネア嬢は、この場から逃げることを選んだ。
 その逃走に、私は少し安心する。どうやらこの場は、無事に切り抜けられたようだ。

「……ありがとうございます。お陰で、助かりました」
「……いや」

 ナルネア嬢が去ってから、私はブライト殿下に頭を下げた。
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