不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?
 自由に動けるようになったナルネアは、すぐに後ろを向いた。しかし、既にそこには誰もいない。
 周囲を見渡したナルネアは、ゆっくりと汗をかいていた。一体誰が声をかけてきたのか、彼女は理解していなかったのだ。

「ナルネア様、どうかされましたか? 先程から、なんだか変ですよ?」
「い、いえ、なんでもありません」
「な、なんでもないって……」
「うるさいですね……私がなんでもないと言ったら、なんでもないのです!」
「あ、す、すみません……」

 困惑する取り巻きに対して、ナルネアは激昂していた。
 それから彼女は、ゆっくりと首を振る。先程受けた恐怖を、頭から振り払おうとしたのだ。
 ナルネアは、どこの誰かもわからない相手からの警告に対して耳を貸すつもりなどなかったのである。

「……まったく、どこの誰だか知りませんが、まったく持って不愉快です」

 ナルネアは、取り巻きを連れて再び歩き始めるのだった。
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