【コミカライズ】断罪不可避の悪役令嬢、純愛騎士の腕の中に墜つ。
生まれ変わったこの乙女ゲーム世界に関して、プレイしたことは確かだけど、あまり好きだった記憶はない。
ゲーム攻略はすんなりで簡単だったし、全員ヒーロー一周して次のゲームに移った気がする……つまり、何が言いたいかというと、メインヒーローの婚約者、悪役令嬢ティルダ・トリエステの断罪後がどうだったか覚えていない。
牢屋に入るか、娼館に売られるか、国外追放なのか……それすらも、わからない。
つまり、断罪後の備えも出来なくて、私は今究極の詰みゲーを経験しているということになる。
嫌だ……私だって、恋したいし、なんなら、素敵なヒーローと結婚したいよー!
ひと気のないバルコニーに出た私は、やたらと綺麗に見える空に浮かぶ月に、なんとなく感傷的になっていた。
……何なの。乙女ゲーム転生って、もっとやるべき事が明確にあって、それに向かって努力するとかあったはずなのに……私には何も見つからない。詰んでいる。転生した意味ある?
「私だって……恋したいー!!」
涙目になった私は大きな声を出して、月に向かって吠えた。遠吠えする狼の気持ちがわかる。なんだか、鬱屈した気持ちが晴れてスッキリする。
別に誰かにこれを、聞かれていたって構わない。
どうせ、悪役令嬢っぽい解釈されて、私の意志とは関係なく、乙女ゲームに都合の良い発言に置き換えられる。