【コミカライズ】断罪不可避の悪役令嬢、純愛騎士の腕の中に墜つ。
わかってます。私はいずれ断罪される悪役令嬢。はーっと大きくため息をついた。
「……あの」
私は階下から聞こえた、躊躇いがちの言葉に驚いた……あら。この人知っている。
確か、王太子アーサーの父、現王陛下のお気に入りだという、騎士ゴートン・リッターだわ。
短い銀髪に青い目。容姿は女性と見紛うほどに美しく、色合いも相まって、まるで月にでも愛されていそうな美形騎士だ。
けど、きっと……ゴートンだって、私を王太子の婚約者で、嫉妬のあまり可愛いヒロインを虐めている公爵令嬢だと思っているのよね。
それは、仕方ないことだと、諦めを込めて彼へ微笑んだ。
「……ごめんなさい。誰も居ないって、思って居たから。恥ずかしいわ」
ゴートンは何度か目を瞬いて、私をじっと見つめ、首を振ってから、もう一度私を見た。
「すみません。とても美しくて、人だとは思えなくて……それに、先程の、貴女の言葉も……驚いて」
……さっきの私の叫びは、このゴートンには別の意味に聞こえていなかったということかしら?
今まで、私が言った通りに受け取られなかった経験があまりにも多かったから、なんだか新鮮に思えて笑ってしまった。
「ええ。一生に一度は情熱的な恋がしてみたくて……婚約者の居る身だと言うのに、いけませんね」
婚約者は居る。けれど、彼は私のことを好きではない。