【コミカライズ】断罪不可避の悪役令嬢、純愛騎士の腕の中に墜つ。
ゴートンには、私の言葉は……そのままで伝わったんだ。
あまりない事態に戸惑いながら私が頷くと、彼は準備動作なく飛び上がり、バルコニーの手すりを乗り越え、私の隣へとやって来た。
すっ……すごい。ゲームの世界補正があるとは言え、ゴートンは素晴らしい運動能力を持っているようだ。
「にっ……忍者?」
「ニンジャ?」
不思議そうに、ゴートンは首を傾げた。
私はこれで、ゴートンには乙女ゲームの強制力が働いていないことを確信した。身のこなしが軽すぎて、忍者に思えるくらい素晴らしい身体能力は置いておいて……。
やっぱり……本来なら伝わらないはずの私の言葉が、ゴートンにはそのまま通じている。
これまでは転生した私が現代日本特有の言葉をうっかり発してしまっても、そのままには取られないし、何かしら変換されて相手には聞こえているようだった。
だから、これもきっとこうなると思って居たんだけど、ゴートンには、私の発した声の音が、そのままで伝わっている。
今までにないことであまりに驚き過ぎて無言で彼の事を見て居たんだけど、ゴートンは私が何か言葉を発するのを待っているようだった。
……そうだ。私には転生してから初めてのことでとても驚いたけど、ゴートンには一切関係ないことだったわ。
「ごっ……ごめんなさい。変なことを言ってしまって。えっと……あんまりにも、そう……貴方が素敵だったから、びっくりしたの」
これは、嘘でもなく紛れもない真実。今まで遠目でしか見たことのないゴートンは、こうして間近で見るとより素敵な男性だった。