エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 笑顔を作ったつもりだけれど、不自然に口角だけをあげた、妙な表情になっている気がする。

「ほぅ」

 善次郎の眼差しが鋭さを増す。すべてを見透かされるようで、ドキリとした。

「まぁ、ときには喧嘩も悪くないぞ。わしと妙子(たえこ)もよう喧嘩をしたもんじゃが、そのたびに絆が深まったからな」

 妙子というのは彼の亡くなった妻のようだ。彼女の名を口にするとき、善次郎の目はとびきり優しくなる。

「奥さまを、深く愛していらっしゃったんですね」
「もちろん。気の強い、跳ねっ返りじゃったが……わしが愛したのは、後にも先にもあいつだけだ」

 善次郎は美月を見て、いたずらっぽく笑む。

「北原の男は一途だから、美月さんも安心してよいぞ。のぅ、晴馬」
「まぁ……」

 晴馬は紅茶を飲むふりをして、言葉をにごす。そんな彼を叱責するかのように、善次郎はカッと目を見開いた。

「ともかくじゃ。北原の男なら、こうと決めたことは貫かねばならんぞ。……最近はスピード離婚なんて軽々しい言葉を聞くようになったが……わしは絶対に認めんからな」

 スピード離婚。まるで自分たちの計画を見抜いているような言葉に、美月はたじろぐ。まじまじと善次郎の顔を見つめてしまったが……やはり彼の心のうちなど、自分ごときにはかれるはずもない。

(いや、世間の風潮の話よね。大丈夫、偽装がバレたわけじゃないわ)
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