エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 褒められて謙遜する恋人の演技を続けながらも、たった今聞いた『元カノ』という単語が美月の心に引っかかる。

(過去に恋人のひとりやふたり……そりゃ、いるわよね)

 そもそも雇われ妻でしかない美月には関係のない話だ。詮索する権利もない。頭ではそう理解しているのに、無意識のうちに脳が彼の元恋人の姿を想像してしまう。

『好きだった気持ちをそう簡単に消せないことも理解できるから』

 ふいに、晴馬の声が耳に蘇った。

 遊園地で省吾の話をしたとき、晴馬はそんなふうに言っていた。あれは、彼自身の経験談だったのだろうか?

(その人を忘れられないから……今も好きで……だから、結婚しない主義なの?)

 一生、結婚はしない。

 晴馬にそんな大きな決断をさせた女性が、実在するのだとしたら……たった数か月、妻のふりをしているだけの自分などかなうはずもない。
 卑屈になるのは嫌だけれど、キスを『忘れて』と言われてしまって自信を持てるはずもなかった。
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