エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
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「消防士になった理由ですか?」

 その日、晴馬は航空消防救助機動部隊、通称エアハイパーレスキューの同僚たちと懇親会をしていた。場所は、隊の拠点である東京ヘリポートからもアクセスしやすい豊洲の居酒屋。乾杯をしてすぐに、隣に座っていた先輩の伊沢からそんな質問を受けた。

 晴馬も身体は大きいほうだが、彼は自分以上だ。趣味は筋トレとのことで、首や腕は格闘家のよう。

「そう、前から聞いてみたいと思ってたんだ。だってお前、有名大学卒だろう? 消防士でなくても、警察のキャリアとか幹部自衛官とかも目指せただろうと思ってさ」

 消防士、警察官、自衛官。それぞれまったく違う職業だが、市民を守るという点は共通しているだろうか。とくにレスキュー隊の仕事は自衛隊と近しい部分があるので、進路選択時に迷ったという話はよく耳にする。

 けれど、晴馬は迷わなかった。

「消防士以外は……考えなかったですね」

 正直にそう答える。

「へぇ。子どもの頃の憧れとか?」
「いえ、憧れとも違うんですが」

 子どもの頃の自分が抱いた思いは、そんなキラキラしたものではなかった。悔しさ、後悔、痛み。今でも思い出すと、身を切られるような心地がする。

 もしも、時を巻き戻せるのなら……二十年前のあの日に帰りたい。

『晴馬なんか大嫌い!』

 初恋の女の子の、どうしようもないほど悲痛な叫び。大嫌いと言われたことがつらかったわけじゃない。美月にあんな顔をさせてしまったことが、あんな台詞を吐かせてしまったことが……ただただ悲しかった。

 晴馬が兄とともに現場に駆けつけたとき、美月が母と暮らす小さなアパートはもう半焼状態だった。そんなところに美月を向かわせることなど絶対にできなくて、引き止めた。
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