エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 佑馬の言葉に渚もうなずく。

「そうねぇ。私の友達に頼んでみてもいいけど……どうする? 晴馬くん」

 渚が晴馬の顔をのぞく。

「まずは自分で、ちょっと当たれそうな女性を考えてみます」

 相手が祖父とはいえ人を騙す行為なので、義姉の友人を巻き込むのは申し訳ない気する。それに夫婦のふりをするのだから、ある程度は信頼のおける女性に頼みたいとも思った。眉根を寄せて悩む晴馬に、渚が聞く。

「でもさ、晴馬くんはどうして独身主義なの? あ、聞いちゃいけない話だった?」

 言ってしまってから、慌てたように彼女は首をすくめた。渚は裏表のない素直な女性で、佑馬は彼女のそういうところに惚れているのだろう。

「大丈夫、聞いちゃいけない話じゃないですよ」

 クスリとして晴馬は答える。

「消防士としての覚悟というか……仕事以上に大切なものを作ってしまうのが、少し怖いんです」

 独身主義と呼ぶほど強固な信念でもないが、自分は結婚しないほうがいいと感じてはいた。それには理由があって――。

「消防士になりたての頃、お世話になっていた先輩が殉職したんです。葬儀が終わったあと、泣き叫ぶでもなく……静かに涙を流す奥さんの姿を目にしてしまって。家族を持つのは怖いことでもあるんだなと思いました」

 消防士になると決めた時点で、自分自身の危険に対する覚悟はできていた。けれど結婚は、愛する妻子にも同じ覚悟を求めることになる。
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