エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 間違いなく祖父が好みそうなタイプとか、しっかり者の彼女ならソツなくこなしてくれそうとか、理由はいくつかあったが、一番は……美月が相手なら、自分は恋する演技が自然にできるだろうと思ったからだ。

 かつて恋をしていた、あの頃の気持ちを思い出せばいいだけだ。よく知らない女性に恋しているふりをする自信はないが、美月にならできる気がする。

(そういえば、美月はこのホテルに勤めているんだよな。退職予定とは言っていたけど、今夜はいるだろうか?)

 晴馬は彼女の姿を捜していた。だから、男と揉めている様子の彼女と遭遇したのはまったくの偶然ではない。

(再会したとき元気がなかったのは、あの男のせいだったのか)

 美月に別れを告げる前に別の女性との結婚を発表。聞けば聞くほど、ひどい男だった。
 必死に涙をこらえる彼女がいじらしくて、クズ男を心底憎らしいと思った。

「その素敵な恋人、俺じゃダメか?」

 気がついたら、そう口走っていた。

 取り繕うように、慌てて契約妻の提案をしたけれど――。

(美月に頼んでみようと思ってはいた。でも今の台詞は……)

 祖父のことも、美月に妻役をお願いするつもりだったことも、完璧に頭から消えていた。
 
 
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