エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
「晴馬のおじいさま、本当に素敵な人だから……騙すの、心苦しくなってきちゃったよ」

 困ったような顔で笑う美月に、思わず言ってしまいそうになる。

 ――ならいっそ、本当の夫婦になるか?

「ん? どうかしたの、晴馬?」
「いや、なんでもないよ」

 すんでのところで、言葉をのみ込む。勢いで、軽々しく口にしていい台詞じゃない。

(いや、俺のこの気持ちは軽々しいものなのか?)

 そんなことないと自信を持って言える。

 告白してもいいだろうか。美月はもう、元恋人に未練はないと言っていた。

 とある夜。子どもが出てくるテレビ番組をふたりで見ていたとき。

「晴馬はなんで……結婚を望まないの?」

 彼女からそんなふうに聞かれた。告白のチャンスだと思った。
 美月となら結婚したい。そう言うつもりだったのに……晴馬の脳裏にあのワンシーンがよぎる。

 殉職した先輩の葬儀。静かに涙を流す彼の妻が……晴馬の脳内で美月に変わっていた。

 もうひとりの自分がいやに冷静な声で問いかけてくる。

〝消防士との結婚で、美月は幸せになれるのか?〟

 母を失った日の美月の泣き顔を思い出す。

(あんな顔、二度とさせられない)

 その思いが、加速していた晴馬の恋心にストップをかけた。

「それは……」

 苦々しい顔で、晴馬は口を閉ざす。美月はそれ以上、詮索してこなかった。
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