エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 ヘリは火災現場であるビルの上空で停止し、晴馬たちは屋上への降下を開始する。降下の方法は、安全だが着地までやや時間のかかるホイスト、速度は出せるものの熟練した技術が必要となるリペリングと、いくつかの種類がある。だが、どの方法にせよ細いけーブルやロープだけを頼りに、高い空から身体を投げ出すことに変わりはない。

 初めて経験したときは恐怖で足がすくんだが、もうすっかり慣れたもの。それに、もっとも危険なのはこの先なのだから。晴馬はあらためて、気合いを入れ直す。

 信じられない暑さのなか、晴馬は市民の非難誘導に当たる。幸い、救助対象に子どもや老人がいなかったこともあり、避難はスムーズに進んだ。

 ところが、あと少しで全員の安全が確保できるというタイミングで退避中のビジネスマンの頭上に、焼け落ちた天井の残骸が降ってきた。晴馬は瞬時に彼をかばい、自らの背中でそれを受け止める。

「彼らを先に! 頼む」

 まずは市民の安全が最優先だ。晴馬は同僚にそう声をかけ、自分はあとから追いかけると告げた。

(問題ない。落ち着いて対処すれば大丈夫だ)

 冷静に身体を起こそうとするも、頭がグラグラして身体に力が入らなかった。尋常ではない熱気のせいか、自分で思っている以上に背中にダメージを負ったのか、もはや判断すらできない。

(まずいな。これはちょっと……)

 視界がかすみ、だんだんと意識が遠のいていくのを感じる。
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