エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 それは決して嘘ではないのだろう。新しい職場、パールトンホテルでの仕事を彼女はとてもがんばっているから。だが……。

「じゃあ私は行くね。晴馬は非番だっけ? しっかり身体を休めてね」

 言葉は優しいけれど、立ちあがった美月は晴馬の顔を見ようとはしない。それに、先ほど伝えたばかりの『非番だけど昼から訓練に行く』という言葉も忘れてしまっている様子だ。

 あのキスからずっと気まずい空気ではあったけれど、ゆうべから美月の態度がとくに変な気がする。

(昨日は……じいさんと食事をして、そのあと伊沢さん夫妻と偶然会ったな。変わったことはなかったと思うが)

 けれど、自分のせいなんじゃないかというのは感じていた。美月は決して器用なタイプじゃない。言葉にはしなくとも、その表情から伝わるものはあった。

(いきなりキスして、あげく忘れろと言って……そりゃあ怒るに決まってるよな)

 晴馬はクシャクシャと自分の前髪を乱して、大きなため息をこぼした。

 今日は非番。先ほど帰宅したばかりなのだが、昼から特別な訓練があり、そこだけは参加する予定になっていた。少し休憩してから、十一時にはマンションを出る。

(美月、今夜は早いかな? いいかげん、ちゃんと話そう)

 正直、まだ覚悟はできていなかった。彼女に好きだと伝える資格が、自分にあるのかもわからない。けれど誤解された状態が一番よくないことは理解できる。

 美月が好きで、だからこそ迷っている。まずはありのままを伝えようと思った。
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