エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 帰ると約束して、帰れなかったら?

 二十年前と同じ苦しみを彼女に与えることだけは、絶対にしたくない。

「だったら――」

 伊沢のこぶしがドンと晴馬の胸を叩く。

「どうすりゃいいか、考えろ」

 美月の笑顔が鮮やかに蘇る。晴馬にとってなにより大切なもの、守るべきものだ。

 晴馬は自身の両手を見つめ、グッと握った。

(嘘はつけない。だけど、この手で美月を幸せにしたい)

 伊沢の言いたいことはわかっている。答えはひとつだ。

(言葉にする勇気を持て。そして、口にした以上は必ず――)

 惑うように揺れていた晴馬の瞳に、強い光が戻る。前だけを見て、晴馬は言う。

「救助を求めるすべての人も、美月も、必ず守る。なにがなんでも、それを真実にするだけだ」

 伊沢がニヤッと口角をあげた。

「わかってるじゃんか。守るもんが増えたなら、そのぶんだけ強くなりゃいい」

 彼に相談してよかった。伊沢の単純明快ぶりが、晴馬の行く先にかかっていた霧を吹き飛ばし、進むべき道がやっと見えた気がする。

(大丈夫だ。俺は美月のためなら強くなれる)

 先日のビル火災でピンチだったとき、彼女の笑顔を思い出したら力が湧いてきた。あれを何度でも、どんな危機におちいっても、やればいい。それだけのことじゃないか。

 伊沢がバンと晴馬の肩を叩く。

「そうと決まれば、筋トレだ、筋トレ!」
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