エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
「……全員で必ず帰る」

 美月も同じ言葉をつぶやいてみた。その重みをずしりと感じる。

「俺、この言葉はあくまでも目標、ひねくれた言い方すると理想論だって……思ってた」

 晴馬は苦笑して、どうしてそう思うのかを話してくれる。

「ヘリから垂らすケーブル。あれは俺たち隊員の命綱なんだけど、状況次第では切断する可能性もあるんだ」
「え、どういうこと?」

 たとえば、険しい山岳地帯でケーブルをおろしたとき。木や岩にケーブルが絡んでヘリごと墜落する恐れが出たときには、全滅を避けるためにケーブルを切る決断をくだす。そのための特殊なカッターがヘリには常備されているそうだ。

「幸い、俺はまだ一度もそのケースを経験したことはないが」
「みんなを守るために誰かが犠牲に?」

 レスキュー隊員という仕事の厳しさが、美月の胸にも重く響く。

「そう。もちろん、そういう特殊な状況を想定した落下訓練もしてはいるけどな」

 そうはいっても、安全に着地できる保証がないのは部外者の自分にもわかる。

 晴馬は悲しげに目を伏せた。

「現実問題として、亡くなる消防士はやっぱりいる。新人時代に俺も、先輩の殉職を目の当たりにしているしな」
「そうだったんだ」

 晴馬はうつむいたまま、言葉を続ける。
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