エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
「オープンな求人募集は行わない。本国からの引き抜きやヘッドハンティング、信頼できる筋からの紹介……俺も採用は保証できない。ただ、北原建設からの紹介として面接を受ける場を用意することはできる」

 晴馬はニヤリとして続ける。

「どう? 悪い条件じゃないだろう」
「パールトンホテルの求人にチャレンジできる……じゅ、十分すぎるメリットだわ!」

 パートやアルバイトでの採用ならともかく、あのホテルの正社員、それもコンシェルジュデスク勤務は狭き門だ。面接を受けるチャンスすら、まず得られない。

「あそこは語学力のハードルがかなり高いんだが、美月はカナダ育ちだから英語は問題ないだろ。帝都グランデでの経験も評価してもらえると思うし、門前払いということはないと思うぞ」
「たとえ門前払いでもいい。チャレンジしてみたい!」

 美月は前のめり気味に晴馬に決意表明する。

「それは取引成立……と受け取っていいか?」

 からかうような瞳が向けられる。

(うっ。パールトンホテルの面接を受けるには、晴馬の妻を三か月演じなくてはいけない、かぁ)

 ほんの少し前までは「無理、無理」と思っていたのに、パールトンホテルを出されたら急に揺れ出す自分の、なんと現金なことか。けれど、コンシェルジュの夢はどうしても諦めたくない大切なもので……。

 思考がまとまらない美月の頭を彼の大きな手がポンポンと叩く。
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