エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 月子は未婚の母というやつで、そのせいで実家から縁を切られてしまっていた。だから美月には月子しかいなかったけれど……大好きな母がいればそれで十分だった。学校も楽しいし、喧嘩友達の晴馬もいる。

 平凡だけど幸せな毎日。当たり前にずっと続いていくと思っていたのに……。

 その日は、なんの予告もなく唐突に訪れた。

 目の前で燃えさかる、月子とふたりで暮らす我が家。乾燥して風の強い夜だったのが災いした。小さなアパートはあっという間に炎に包まれた。まるで意志を持っているかのように暴れる黒煙、美月の目には悪魔そのものに見えた。

「お母さん! 早く、早くっ」

 声が枯れるほどに美月はわめき散らした。すぐそばで眠っていたはずなのに、銀色の制服を着た消防士に助け出されたのは美月だけだった。何度周囲を見渡しても、月子の姿はない。

「お母さんはどこ? もしかしてまだなかにいるの?」

 近くにいる大人に問いかけても、誰もかれも自分と身内のことで精いっぱいで答えはない。

(――お母さん!)

 自分を保護していた消防士の目が一瞬離れた隙をついて、美月は黒煙に向かって駆け出す。汚れた頬に熱風が吹きつけた。あまりの熱さにひるみそうになるが、それでもどうにか足を動かす。それなのに――。

「美月っ、やめろ。馬鹿っ」
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